呉服屋の若旦那に恋しました


提案者からの個人LINEを慌てて開くと、京都なう、という文と、京都駅の写メが添付されていた。

え!? 待って!? 皆会社は!?

あ、でもそっか、普通の事務職の人はGWは休日なのか……。

友人には志貴のことは全面的に隠していたが、京都に就職したことは伝えてあった。

写メには大学の友達男女4人が写っている。

私は、既読にしてからすぐに返信した。


『仕事終わったら合流する!』


仕事先を教えていなくて良かった。

がさつキャラの私がしっとりと着物を着て接客していたら絶対笑われる。

今日はちゃっちゃと仕事を終わらせて、はやく友達と合流してパーッと飲もう!

私は、急に気持ちが明るくなって、やる気がわいてきた。



はやく仕事終わらないかな。はやく皆に会いたい。

はやる気持ちが抑えられなくて、私はついついソワソワしてしまった。

従業員の中本さんに、今日は何かあるんです? と聞かれてしまった。


「今日久々に東京の友達と会えるんです」

「まあ、ええなあ、折角んGWですもんね」

「今日志貴いなくて良かったー、あの人帰ってくる前に行かないと、遊んでる暇あるなら着物の勉強しろとか言いそうだもん」

「息抜きは必要ですからねえ、楽しんできておくれやす」

「中本さん……っ」


因みにこの従業員の中本さんは、もしお母さんが生きていたなら私のお母さんと同い年だ。

だからなんだかすごく親しみやすくて、実際に中本さんも私と年の近い娘がいるらしく、凄く優しくしてくれる。既に静枝さん並に大好きだ。

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