殺戮都市
まずい……まずい!


さっきの女性はまだ死んでいないようだし、それが見付かれば、誰かがいると警戒される!


「良いんだよ。隙だらけのやつを一度に二人も……って、なんだ!?」


中に入って来るなり、女性に気付いてしまったみたいで、一気に場の空気が変わる。


柱の陰、様子を伺いながら、俺は耳に神経を集中させた。


「し、死んでるんですか!?」


男が一人と、女が一人。


「いや、でももうダメだな。気を付けろ……その辺りに潜んでるかもしれない」


女の方は、俺と同じくこの街に来たばかりのような感じがする。


厄介なのは男の方だな。


脅しても、さっきの女性のように退いてくれそうにはない。


「ど、どうすれば良いですか!?」


「武器を出して……敵に後ろを取られないように気を付けて」


敵……か。


俺とこの二人に個人的な恨みはない。


ただ、所属している軍が違うというだけで、無意味な殺し合いをさせられているのだ。


張り詰めた空気に、喉が渇く。


入り口を背に、柱に隠れている俺に迫る男女の二人組。


殺せないなんて言ってられない時が来たのかもしれない。


躊躇すれば、男か女か、どちらかに殺されてしまうかもしれないしれないから。
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