殺戮都市
恵梨香さんの話は少し衝撃的だった。


この街にいて気付いた事。


それは、ソウルがなくなったら生き返る事が出来なくなる……というだけではないらしい。


さっきの鬼頭がそうだったように、ソウルが0の状態で死ねばいずれ怪物に喰われる。


喰われれば、どういうわけかポーンとしてバベルの塔を守る事になるのだ。


そうして延々と怪物は補充されて行く。


怪物が減れば怪物を、人が減れば人を補充して、この街は続いて行く。


そんな事を本当にバベルの塔の中にいる誰かがやっているのか?


だとしたら、その人は紛れもなくこの街の神じゃないか。


恵梨香さんがその人に会ったとしても、何が出来るとも思えない。


東西南北、全ての軍を見た恵梨香さんは、バベルの塔に挑む人はいなかった。


誰もが欲望を剥き出しにして、自分の快楽の為だけに生きていると言っていた。


この世界は、法律やルールに縛られた元の世界とは違う、本来の生物としての人間を浮き彫りにする世界なのかもしれない。


大きな店に着くまでの間、そんな事を話してくれていた。


人に会わないように、怪物に会わないように慎重に歩きながら。
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