殺戮都市
今は、敵でも仲間でもない。


ただ、ナイトの群れから逃げる為にかくまってもらっただけ関係で、実に不安定なのだ。


俺達はそうはしないけれど、今すぐ戦闘に発展したって不思議じゃない。


「達也は危険……それが分かったから、私はあいつから離れたんだ。今更まともな話し合いなんて期待はしていない。殺し合いになるなら……それも仕方ないと思っている」


寂しそうに俯いて、そう呟いた恵梨香さん。


「よし、じゃあ改めて俺達は仲間だ。松田が作った王国を叩き潰してやろうぜ」


ニッと笑みを浮かべて、俺達の前に拳を突き出した中川。


だけど、恵梨香さんはそれに反応しない。


慌てて俺が、その拳に拳を合わせた。


恵梨香さんは松田を止めたいと思っているはずだ。


そして中川は、戦えない者を処分する松田を殺そうとしている。


だけど俺は……相変わらず俺だけが、これといった意志もなく状況に流されているだけ。


個人的に松田に恨みがあるわけでもないのに、戦いに身を投じて行くのかと考えると、少し虚しさを覚えた。


バベルの塔に行く。


今の俺にあるのはその目的だけ。


松田と恵梨香さんが対峙した時、本当に松田を殺せるのか、それが気になっていた。
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