恋の神様はどこにいる?
★仕事のあれやこれ

「お疲れ様でした」

最後の参拝客にお守りを渡すと、本殿から太鼓の音が大きく鳴り響く。

壁に掛かっている時計を見れば、時刻は午後五時ちょうど。

「もうこんな時間か。小町ちゃん、お疲れさま。もうお守りを受け取りに来る人もいないみたいだし、そろそろ片付けを始めようか」

「はい」

さっきの太鼓の音は社殿の閉門を知らすものだったらしく、千里さんは立ち上がると授与所の窓口を次々に閉めていく。

私も千里さんを手伝おうと、立ち上がろうとしたんだけど……。

「あぁっ!!」

「どうしたの? 小町ちゃん、大丈夫?」

「す、すみません。足が痺れちゃって」

立ち上がるどころか膝立ちになることもできないくらい、脚全体が痺れてしまっていた。

うわっ、恥ずかしい。これじゃあ、日頃だらしない格好をして座っているのがバレバレ。

千里さんと和香さんは何事も無く立って、後片付けをしているというのに。

このままじゃ申し訳ないともう一度挑戦してみたんだけど、やっぱり生まれたての動物のみたいにクニャクニャとしてしまい立つことができない。

「いいよ小町ちゃん、無理しないで」

「そうですよ。私も初めての時は、そんな感じでしたから。もう少し、座ってて下さい」

千里さんだけでなく和歌さんにまでそう言われてしまい、私は「じゃあ、お言葉に甘えて」と言うとその場で脚をさすり始めた。
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