健留と出会ったのは小6の時だった。
 転校生だったあいつは、転校初日から周囲の目を引いた。
 頭脳明晰、容姿端麗、冷静沈着。
 四文字熟語のオンパレードみたいな奴だった。
 だが、人がうらやましくなるくらい完璧な奴なのに、健留は何に対しても冷めた目で見ていた。
 人を寄せ付けない氷のような、それでいて淋しそうな目。
 とても12歳のものとは思えなかった。
「あいつヤバい」
 このまま大人になったら奴は危険だ。
 精神が崩壊するんじゃないか?
 考えるより先に俺は健留の手を引いていた。
 生徒会長の権限で勝手に副会長に任命し、あいつの意志を無視して学校の行事に参加させ、何も考えられなくなるくらい仕事に没頭させた。
 健留はそんな俺の存在に慣れたのか、いつも一緒に過ごす事が多くなった。
 中学になっても、俺達は一緒にいた。俺がまた健留を強引に生徒会に入れたのだ。
 嫌な顔をしながらも、あいつは仕事は完璧にこなす。
 そんなある日、突然俺に妹が出来た。
 髪の長いとても可愛い子だった。
 親父がよそで作った子だったが、そんな事は関係ない。
 怯えるような瞳で俺を見る妹を守りたいと思った。
 それからは自他共に認めるシスコンになった。
 健留はそんな俺の姿を見て苦笑していたが、あいつも人の事は言えない。
 女嫌いだった健留は、綾乃にだけは優しかった。
 勉強も俺よりあいつの方が妹に丁寧に教えた。
 最初は、綾乃の境遇も知ってたし、同情もしてたのかもしれない。
 だが、一緒に過ごす時間が増えると、健留の綾乃に対する視線が愛情に満ちているのがわかった。
「本人はまだ自覚なしか。だがいい傾向だ」
 俺は一人ほくそ笑む。
 綾乃も健留のことを好きみたいだし、2人は一緒の方がお互いの為になりそうだ。
 俺としても変な男に綾乃をさらわれるよりは健留の方がいい。
「俺が一肌脱ぐか」
 頭の中で策を練った。
 綾乃と違って健留は思うように動いてくれなかったが、最終的にはくっついた。
結婚式で見せた妹の幸せそうな笑顔が忘れられない。
 これで安心だ。
「何笑ってるの?」
 春香がベッドルームに入って来た。
「あいつらがくっついてくれて兄としてはうれしんだよ」
「じゃあ、今度はもっと自分の幸せを考えてみたら?」
 春香の言葉は意味深だ。
 彼女は手に隠し持っていたスティックを俺に見せた。
「……え?」
俺は目を丸くする。
自分でも間抜けな顔をしていたと思う。
 これは……ひょっとして妊娠検査薬?
「私も妊娠したかもしれない」
 春香は爆弾発言をすると、ぺろっと舌を出した。
「え?」
 予想外の展開に言葉が出て来ない。
 綾乃と健留の心配ばかりしてて、春香の可能性には全く気づかなかった。
 俺って鈍すぎだろ。
 いや、そんな事より病院!
「……医者。診療所何番だっけ?」
 呆然としながらスマホを取り出すと、春香がオレの手からスマホを奪った。
「もう深夜よ。急病人じゃないのに先生呼び出してどうするのよ。落ち着きなさいよ」
 春香にキツく叱られる。 
 俺の嫁さんはしっかりしてるらしい。
 男はこういう時無力だ。おろおろするばかりで役に立たない。
「睡眠大事だからな。身体冷やさないようにしろよ」
「親バカになる恭介の姿が想像できるよ」 
「春香が嫁さんで良かったよ。明日一緒に診てもらおう」
 俺が優しく口づけると、春香は至福の笑みを浮かべた。
 家族が増えるっていい。
 幸せを噛みしめながら思う。
 家族みんなが笑顔でありますように。

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