あの日あの時...あの場所で
新たな登場人物








何も変わらないまま、普通の日常が戻った。

あ、何もじゃないか。

連絡先を交換した柊とは、メールやLINEでやり取りしてる。

昔みたいに他愛のない話をしてるだけ。

その日の出来事や食べた物や、本当に日常的な会話で、これと言って親展はない。



もちろん、あれ以来会ってない。


私は狼姫で、柊は西のキングだから、易々と会える関係でないもからね。



あまりにも普通に日常に、私は決断を下すことを遠ざけてしまっていた。

こんなのダメなのに。

豪にも柊にも、なんの返事を返さないまま宙ぶらりんでいる私はとても狡い。


そんな自分に嫌気がさすけど、本当にどうして良いのか分かんないの。


今は、自分の気持ちさえも混乱して上手く判断をつけられない。


こんなの柊や豪を好きな女の子からしたら、狡くて卑怯だと言われちゃうだろうね。


分かってるけど...。

焦っても焦っても、答えは見つからないの。


白か黒か、どちらかしか選べやしないのに、私はグレーゾーンで立ち止まってる。



窓から、見える空の雲はすっかり秋の装いで。

私だけがあの夏に立ち止まったままだと思い知らされる。


教壇で話す先生の声も上手く聞き取れない私は、何をしたいのだろうか。

片手にシャーペンを握りしめたままもう片方で机に頬杖をついて、ぼんやりと空を見つめ続けた。












「...き...瑠樹、早く書き写すさねぇと黒板消されんぞ」

隣から聞こえた豪の声にハッとする。


あ...授業中だった。

慌てて黒板へと目を向けた。


「...あっ..」

そこに書かれてる内容は大学受験には必須の所で、私は慌てて持っていたシャーペンでノートへと書き写していく。


もうすぐ、選考テストの日なのに、こんなんじゃだめだ。

選考テストとは、受験大学の最終決定をするのに重要になるテスト

このテストの良し悪しで将来が決まると言っても過言じゃないらしい。


こんな大事な時期に私は何をぼんやりとしてるんだろう。


ほんと、メンタル弱すぎる。


カリカリとノートを取りながら、小さく溜め息をついた。




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