貴方に魅せられて
一目惚れ
「二人とも綺麗だ。」
叔父様は優しく微笑んで立ち上がり
慌てたウェイターを制止し
自ら私たち2人を
椅子に座らせてくれた。

「紹介しよう。
息子の翔平(しょうへい)だ。」

「翔平、こちらが
今話していた麻衣ちゃん。」

…え?息子?
だって子供はいないんじゃ…

私は状況を飲み込めず由香里さんに
目をやった。
由香里さんは
私が勘違いしていることに
すぐ気づいたようだ。

「さっきの話、言い方が
悪かったかしら?
あのね、私は息子を2人産んだの。
で、3人目こそ女の子をと思った矢先
産めなくなっちゃって。」

由香里さんはあっさり言って微笑んだ。
…なるほど…
てことはもう一人
息子さんがいるってこと…


確かに、よく見ると
叔父様と由香里さんに似ている。
通りで顔立ちがいいわけだ。

「は…初めまして。神崎麻衣です。」

私はドキドキとうるさい心臓の音に
おどおどしながら言った。

男性は表情一つ変えず

「どうも。」

とだけ言った。

…そっけない…
それ以上話しかけるなと言われたような
気さえする低い声だった。

私は少ししゅんとした。

「相変わらず翔ちゃんは
冷たいんだから…
ごめんね麻衣ちゃん。
翔ちゃんはいつもこうなの。
でも、いい子なのよ。」

そう言う由香里さんに

「うるせぇよ由香里。」

とまた低い声で言った。

ぞくっとした。
母親の名を呼んだだけなのに
なんだろう。
すごく艶っぽい。
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