ささくれとレモネード




暦は皐月を迎えた。


保健室の一件から悪夢を見る回数は減るどころか、一段と多くなっていた。


榛名は、下旬を過ぎれば、この現状が段々と落ち着いてくるのを分かっていたのた。


だから取り乱すことはあれ以来、ほとんど無いのだが、それは少なからず、保健室の彼が関わっているのを否定できなかった。


落ち着いていたのは上級生だったからなのだろうか、それとも東校舎の理系の生徒なのだろうか。


巡らす思いが少しずつ薄れていく頃、体育教官から呼び出しがかかった。


昼の放送で名前を呼ばれてから、身を縮こまらせて教官室へと向かう。


呼び出される理由について、全く覚えがないからこそ尚更怖い。


レポートは全て提出したし不安になることは一つもない、と、深呼吸をして、教官室のドアをノックした。


「はい、どうぞ」


しゃっきりと背筋の伸びるような返事がして、榛名は恐る恐るドアを開いた。


すると、いたのだ。


「あ、」


“保健室の彼”が。




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