引き立て役よさようなら(番外編追加)

2回目のバカ

「お先に失礼します」
早番で午後6時に仕事が終わった。
普通、彼氏と会えると思うとワクワクドキドキするのだろうけど、
優花の場合は違う意味でドキドキしていた。
お昼休憩の時の電話・・・
『わかった・・・その頃に迎えに行くよ。』
初めて会った時は薄暗い居酒屋で目立たなかったかもしれないが
優花の勤める会社「タケダデンキ」は駅前にある有名な家電ショップ。
人の行き来も激しいこの場所に本当に来るのか・・・来ても大丈夫なのか?
そしてそれをもし、知り合いに目撃されたらどうしよう。
そう考えただけでドキドキは止まらなかった。
なんとなく挙動不審気味に従業員の通用口を出て大通りに出ると
電信柱にもたれかかった細身の男を発見。
達央だ。
優花に気がついたのだろうか、達央は電信柱から身体を離すと
優花のいる方へと歩いてきた。
「久しぶり~。お仕事お疲れ様」
「お・・お疲れ様です・・・ってか・・いいんですか?そんな変装もなしで」
達央は初めて会った時と同じようにTシャツとジーンズといったラフな格好だった。
「心配してくれんの?」
「そ・・そりゃ~~そうですよ。だってサングラスもマスクも
してないし・・」
小声で話す優花を達央はジーンズのポケットに手を入れたまま
猫背気味な身体を震わせながら笑う。
「何がおかしいんですか?心配してるのに・・」
「ごめんごめん。たぶんその方が目立つわ・・・
俺、意外と気づかれないんだよね~オーラないのかも・・・」
そんな事はない。
優花は初めて達央と会った時に感じたオーラを思い出していた。
「とりあえず行こうか・・・」
「え?何処に行くんですか?」
「いいところ・・・」
達央は路駐している車を指さし
「あれ・・・俺の車だから」そういって車に乗るよう促された。
< 32 / 320 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop