レッスンはアフターで
レッスン4 「言葉のキャッチボールを」
順一のヤロウ!


とんでもない女だ。公衆の面前で泣いて、この俺を困らせるなどして。


あまりにも辛そうな顔をしているから、情けをかけてしまった。


仕事で来たと順一に言われたら、ぞんざいに扱えないし。


女に無関心の俺がつまらない女に振り回されて、今頃アイツは笑っているだろう。自分が仕掛けた罠通りに動く俺を見て楽しんでいるだろう。


別にいいけど。


目の前で、記入されていく入会届。とても綺麗な字で書かれている。


特に悪用するつもりはないが、この女、俺のマンションの近くに住むご近所ってやつだ。


そうとわかれば、今夜は、持ち帰って慰めてやろうか。キスして泣かれた時は焦ったが、友達に先を越されて焦る結婚適齢期の寂しさくらいは埋めてやれる。


だが、俺はすぐその考えを否定した。この女が怒るに決まってる。そうなれば、また順一に言われて面倒なことになる。


やっぱ、アイツの言う通り謝る方が楽だな。

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