幸せの花が咲く町で
「クスリでラリった若い男の運転する車に、両親は……」

そう言っただけで、身体が震えだすのがわかった。



「覚えてます!
うちの近くの事故でしたし、次の日の新聞にも載ってましたから……」

「あの時…両親は僕を迎えに駅に来ていて……
そして……」

だめだ……動悸がして気分が悪い。


「すみません。
ちょっとまだ体調が良くないので、休ませていただきます。」

僕はそう言い残し、苦しい息の中、どうにか部屋に戻った。



なんてことだ……
あれからもう四年も経ってるというのに、あの時の話をするだけで僕はまだこんな風になってしまう……



情けなかった……
弱い自分が悔しくて、いやでたまらなかった。



ずいぶん元気になったような気がしてたのに、僕はまだ少しも立ち直れていなかった。
そのことに気付いてしまうと、酷く気が滅入った。


(僕は、弱虫だ……
なっちゃんに守られてた子供の頃の僕よりも、もっと弱虫だ……)



流れ出る涙を、僕は枕に押し付けた。
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