幸せの花が咲く町で
「ねぇ……なっちゃん……
篠宮さんと、何の話してたの?」

「うん?
あぁ、いろいろ……
母さんが、香織さんのお店によく行ってたって話、あんたも聞いたよね?」

「……うん。」

「香織さん、すっごく驚いてた……」

「……だろうね。」



この話は今でもやっぱり苦手だ。
でも、僕から訊ねたことだし、仕方がない。



「ところで、この前、小太郎、事故に遭いかけたんだって?」

「え…?」



なっちゃんの言葉が、僕を二日前のあの時に引き戻した。



(そうだ…あの時……
小太郎が僕をみつけて、バス停からいきなり飛び出して……
そこへ赤い車が走って来て……)



記憶が鮮明になると同時に、急に脈が速くなり、身体ががたがたと震え始めた。



「優一!」

なっちゃんは僕の異変に気付いたのか、僕の手を両手でしっかり握り締めた。



「大丈夫だよ。
こたは香織さんが助けてくれた。
なんともないの、あんたも知ってるでしょ?」

「あ…う、うん。」

なっちゃんは立ち上がって僕の後ろに回り、優しく背中をさすってくれた。

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