幸せの花が咲く町で
「あ!今日はてんぷらだったんだね!
おいしそう~!
パパ、僕のお箸!」

小太郎はそう言って席に着いた。



「おまえ、翔君のところでご飯食べて来たんだろ?」

「でも、てんぷらは別腹だから。」

いつの間にか、また小太郎はおかしな言葉を覚えてしまったようだ。



「少しにしとくんだぞ。
お腹痛くなったら大変だからな。」

「うん、わかった~!」

小皿と箸を差し出すと、小太郎はエビのてんぷらに手を伸ばした。



「おいしい~!!」

「ねぇ、小太郎ちゃん……翔君のお家では何を食べて来たの?」

「カレーライスとサラダ、それとプリンだよ。
あのね、翔君のお家では、ママがお料理作ってたよ。」

「だいたいのお家はそうなんだよ。
うちはママが働いてるから、パパが作るんだ。」

「うん、知ってる。
ママは料理もお掃除も嫌いだもんね。」

事もなげにそう答えた小太郎に、僕は失笑するしかなかった。
だけど、小太郎がそのことをあまり深くは考えていないということがわかって、なんとなくほっとした。



どうしてパパは働かないの?



そんなことを訊かれたら、やっぱり僕は返事に困ったと思う。
神経質な僕とは違い、細かいことにこだわらない所が、さすがはなっちゃんの子供だと思ったら、また頬が緩んだ。

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