幸せの花が咲く町で
◆香織

悪意





「どうしたんだい?珍しいねぇ……」

「たまには良いじゃない。」



堤さんの家からの帰り道……
私はスーパーに立ち寄り、目についた花を買った。



「なんて花なんだい?」

「サンゴールドっていうのよ。
ひまわりの一種よ。」

「これがひまわり?
……それにしてもすごい花だね。
一体何枚の花弁が重なってるんだろうね。」



母は、興味深気にサンゴールドの花に見入っていた。



家に花を買って帰るなんて、何年ぶりのことだろう?
確か、花屋に勤め始めた頃は、たまにもらってきたりもしたけど、こんな狭くて汚い家に花なんて…そう思って、いつの間にか飾らなくなってしまった。


だけど、今日はスーパーの表に並んでた花に妙に気をひかれて……



堤さんに母の話をしたせいかもしれない。
話しながら私は、本当に母に申し訳ないと思った。
母の告白を聞いた時よりも、今日の方がずっとそう思った。
母は一番苦しい時に誰も頼れる人がなく、一人でその苦しみと戦ってたんだと思うと、本当に胸を締め付けられる想いだった。



こんなものくらいで償いになるとは思わないけど……
花は人の心を癒してくれるから、すこしでも母の気持ちが軽くなれば……



(……って、遅すぎるよね。
母さんはもう乗り越えたんだから……)



遅すぎてもなんでも、とにかく家に花があるのは私自身も気持ちが良い。
これからは、たまに花を買って来よう……私はふとそう思った。





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