幸せの花が咲く町で




(本当に出来るかしら?)



家に戻って、いつもと同じ生活をしているうちに、カラオケ店では噴出しそうだった熱い気持ちはだんだんと冷めていった。



夏美さんは、堤さんが私のことを想ってるっておっしゃったけど、本当にそんなことあるだろうか?
こんなに地味で何の魅力もない……年齢も5つも年上で、しかも実際の年齢より上に見られるような私のどこを堤さんが気に入って下さるというんだろう?
外見だけじゃない。
内面だってそう。
人に誇れるようなものは何ひとつ持ってない上に、一生懸命貯めた貯金を……



夏美さんは、私の話をそう驚かれもしなかった。
私にとっては一生忘れられないような大きな出来事だったけど、こんなこと、世間ではよくあることなんだろうか?
私は、大げさに考えすぎてたんだろうか?



確かに、私は智君のことを誰にも話さなかった。
話せるような友達もいなかったし、母さんにはとても言えなかったし……



私は判断を間違っていた……?
思い詰めすぎていたの?



本当に……私はまた誰かを好きになっても良いんだろうか??



そんなことをあれこれ考えると、不安ばかりが大きくなって、私は勇気を失ってしまってた。



堤さんは、私のことなんて好きなはずがない。
私が、堤さんに何かしてあげられるはずがない。
私は、こんなに無力なんだもの。



考えれば考える程、気持ちはネガティブな方向へいってしまって…ついには、花屋を辞めて、この町から引っ越そうかと……
そんなことまで考え始めていた。
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