幸せの花が咲く町で
母の年金とコンビニのバイトだけでは暮らしていけないから、私はのんびりしていることは出来なかった。
失業保険が切れる前に、早く仕事を見つけないと……


母には会社を辞めたことを言わなかった。
心配をかけたくなかったことと、辞めた理由を聞かれたくなかったから……
私は、いつものように家を出ては、職を探す日々を続けた。



事務なんてどこにでも募集があると思ってた。
だけど、どうしても今までのところと比べてしまう……
岡村さんのことさえなければ、とても恵まれた職場だったんだということを痛感した。

年齢のこともちょっとした障害になった。
あの会社に就職した当時とは違って、私はもう自分の希望ばかり言ってられない年齢なんだということも思い知った。
前の会社を辞めた理由を聞かれるのもいやだった。



なかなか仕事はみつからなかった。
バイトはすぐにみつかったから、仕事も同じように考えていたけれど、バイトのように簡単にはみつからなかった。



しばらくして、その原因に気付いた。
私には働く意欲がなかったんだと思う。
借金を完済しても、まだ母さんに返すお金があるし、なによりも生活のためには働かないといけない。
なのに、借金を返し終えたた頃から、なんとなく気持ちのはりがなくなったような気はしていた。
知らない人とまた新たに関わっていかなくてはならないことも、気が重かった。



そのうち、私は家の近くで時間を潰すようになっていた。
万一、母さんにみつかったら困るから、駅の反対側をぶらついた。
反対側には、母さんはまず行くことはなかったから……


ある日、公園の傍に小さな花屋さんを発見した。
花屋とはいっても、ちょうどお店の改装中かなにかで、そこでは数人の人々が忙しそうに動き回っていて、その中のひとりの男性が、荷物を運ぶ途中で封筒を落としたのを見た。



「あ、あの……」

私はそれを拾って、男性の前に差し出した。



「あぁ、君か……待ってたんだ!
そこの荷物を店の中に運んでくれ。」

「え…あ、あの……私……」

「すまないが、時間がないんだ。
今日中にやってしまわないといけないからな。
さ、頼んだぞ!」

何がなんだかわからないうちに、私は作業の手伝いをやらされる羽目になり、お昼まで休みなく働かされた。
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