幸せの花が咲く町で




(あそこ、ヤブなのかな……)



次の日の朝になっても、まだだるさは抜けなかった。
点滴もして、薬も飲んで、異常な程、睡眠もとったから、今日はもうすっきりするかと思ったら、まだそうはなっていなかった。
それどころか、昨日まではあまり出てなかった咳までが出るようになっていた。
身体の関節も痛む。
でも、そんなことは言ってられない。
早く起きて、小太郎の朝ごはんを作ってやらないと……
重い身体を無理に起こした時、玄関先でチャイムが鳴った。



「は~い!」

小太郎の声が聞こえて、バタバタと階段を降りる音がした。
それに続いて、もうひとりの足音も。



こんな朝早くに一体誰が……?
そう思いながら、僕も下に降りていくと、そこには花屋の篠宮さんが立っていた。



「あ、おはようございます!」

「優一…あんた、何してんのよ。
まだ寝とかなきゃダメでしょ?」

そう言いながら、なっちゃんは僕の額に触れた。



「ほら、まだ熱がある!
さ、早く部屋に戻りなさい。」

「でも、朝ごはんの準備が…それに小太郎を……」

「馬鹿だねぇ!そのために篠宮さんに来てもらったんじゃないか。
あんたは余計な心配せずに、寝とけば良いの!
さぁ、早く戻った、戻った。」

僕はなっちゃんに背中を押され、よくわけのわからないまま、部屋に戻る羽目になった。






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