† of Thousand~千の定義
独章
† 独章



しっかりしろと言わんばかりに、

「ローズ!!」

彼が私のあだ名を呼んだ。

世界は赤く染まり、黒く崩れ、倒壊した城の一部が、荒々しく踏みしだかれている。

現実と切り離された、直径百メートルしかない異空間。

その世界の中央からやや外れた、私の正面、瓦礫を踏み荒らす巨体の化け物を、彼はたったひとり、その右腕一本で押さえ込んでいる。

「ローズ、いいか、よく見ておけ……!!」

円形ドーム状に切り離された世界の外は、赤い空を広がらせ、黒い壁を無限に続かせている。

彼が定義していた。

ここは『狭間』だと。

非属に分類される、『存在しない狭間』だと。

誰のものでもあり、誰のものでもなく、誰もが訪れることができ、しかし誰も訪れようとしない、異空間だと。

彼は定義していた。

そして、私にはまだわかるまいと、笑ってもいた。
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