中山ゆうみが苦戦しているようだ。


女優としての知名度は高いが、出演作品はまだ少ない。しかも舞台はこれが初めて。
彼女はどうしても小さくまとまってしまいがちだった。テレビカメラの前ならそれもいいけれど、舞台は広く、後方の座席からでも、自分を見てもらわなくてはならない。舞台全部を自分に取り込むぐらいの気持ちがないと、広いステージ、たくさんの出演者の中で埋没してしまうのだ。


三池も頭を悩ませていた。彼女の演技は悪くない。キャラクターはいいし、台詞もしっかり覚えてる。あとは舞台での身体の動かし方、見せ方なのだ。


「ゆうみ、顔だけじゃない、身体全部なんだ、わかる?」
「……はい」
「じゃあ、もう一回」


シーンの練習が終わると、ゆうみは大体うなだれて、稽古場の隅で膝を抱える。精神的に参っているように見えた。
このメンバーで始めてもう二週間以上たったが、彼女の性格なのか、なかなか他の劇団員と打ち解けることがなかった。そんなゆうみに、孝志はいつも付き添う。彼女の悩みを聞き、励まし、演技のアドバイスをしているようだった。