豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
理想の男

1



「ミツさん、稽古場きてくださいよ」
輝がコーヒー片手に、そう言った。


孝志と輝を追い出した日以来、輝が毎日、しつこく家にやってくる。


最初は邪険に扱っていたが、廊下に放り出しておくのも不憫で、なんとなく家にあげてしまった。もちろん「手を触れたら追い出すから!」と厳しく言い聞かせたけど。


「俺、朝迎えに来ます。ミツさん、塾はお昼すぎからでしょう?」
「……強引だね、輝くん」
「だって来てほしいんだもん」


可愛く甘えてくることも忘れない。割としたたかな男なのかも。


「俺、今、絶好調だから、ミツさんに見せたいんだ」
「へえ、そうなの?」
「そうそう、三池さんには褒められた。でも、ちょっと、叱られた」
「叱られたの?」
光恵は驚いて聞き返した。


「今、佐田さんが、スランプなんだ。俺がぐいぐいきすぎてるって、三池さんが」
「……」
「でも俺ぐらいやったほうがいいに決まってるんですよ。もうちょっと佐田さんが出てくればいい話で」
「ずいぶんと自信満々ね」
「その方が、舞台よくなるでしょ?」


輝は無邪気に笑った。


< 176 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop