「おつかれさまでした!」
三池がビールのグラスを掲げ、声をかけた。


「おつかれさまでしたーーーっ」
劇団員達もグラスを持ち上げた。


一月公演の打ち上げ。いつもの居酒屋の二階は、貸し切り状態だ。徐々に劇団は変わり始めている。一番の変化は、やはり野島輝だ。噂ではすでに非公式のファンクラブができており、会員数は500人を超えているらしい。劇場に足を運んでくれる人たちの目当ては、もっぱら野島輝。今や看板俳優になった。


机の上には、お刺身や焼き鳥などの、いつものメニュー。光恵は窓際の一番奥の席に座った。今もまだ、劇団内では喫煙者が多い。ここが一番煙がこないからだ。


「ミツさん、おつかれさまでした」
隣には輝が座っている。彼もまたタバコの煙が苦手なタイプだ。


「おつかれさま」
光恵は笑顔でグラスを鳴らした。


「俺、今回の脚本、すごく好きでした。またやりたいです。そしたらがらりとキャラクターを変えたいって思うんです。もうどんな風にやるか、頭の中ではできてるんですよ」
「へえ、すごいね、楽しいでしょう、この仕事」
光恵はグラスに口をつけた。


「はい、すごく! 違う人生を経験できるって、ほんと興奮します。ミツさんも、この仕事好きでしょう?」
「そうね」
「この劇団に、ミツさんの本はかかせませんよ」
「ありがとう」
光恵は微笑んだ。


「次も新作ですか?」
「う……ん、ちょっと休憩かな。何にも出てこなくって」
「そうですか、残念。でもそのうち、俺のために書いてくださいよね」
「よし、わかった!」
光恵は元気よくそう言った。