新しい脚本を手に、新しい幕があける。


今日からいよいよ新作舞台の練習がスタートだ。稽古場の中央に会議テーブルが四角く配置され、その周りには寒さをしのぐための電気ストーブがいくつか。この稽古場は空間が広いので、冬の間はとても寒いからだ。


改訂した台本の許可が出たのは、つい先週のこと。約二週間、この改訂にかかり切りだった。心の中の抵抗感を押し込めつつ、光恵は「中山ゆうみ」という人物の映画やドラマを見て、雑誌を読んだ。彼女の人となりからかけ離れないように、それでいてまったく同じでもいけない。事務所側の注文は難しいものだったからだ。


今日、孝志に会う。
九ヶ月ぶりだ。


どんな顔をして会えばいい? なんて、そんなことを悩んでいるのはおそらく光恵だけで、孝志にとっては仕事の一つでしかないだろう。
約束を果たすための、古巣での仕事。


続々と役者が稽古場に入って来た。みな、いつもと少し雰囲気の違う稽古場に、戸惑っているようだ。


「俺、ここ座っていいの?」
「机が出てるなんて、始めてじゃねーか?」
皆口々に話している。


輝がやってきて、光恵に「なんか、いやに改まってますね」と話しかけた。


「うん。そうだね。今日は事務所から女優さんもくるらしいし」
「ああ、三池さんが言ってました。中山ゆうみですよね」
「うん」
「かわいいだろうなあ」
輝はどことなくうきうきしている。


「彼女の作品、見たことあるの?」
「見ましたよ。うまいです」
輝の顔が引き締まった。「アイドル女優じゃないと思います」


「そう、楽しみだね」
光恵は場を盛り上げるように、声を高くそう言った。