甘い恋飯は残業後に
●逃げられない


* * *


どうして休みの日というのは、平日よりも時間が過ぎるのが早く感じるのだろう。

そういうのは大概、楽しい週末を過ごした時に思うことだけど、今回は違う。月曜日がやってくるのが憂鬱だったからだ。


「……会社、行きたくないな」

今日はその、待ち望んでいなかった月曜日。いつもより一時間半も早く家を出たわたしは、会社近くの公園のベンチに座っていた。

週末は、実家には帰らなかった。現実逃避する為に帰ろうかとも思ったけど、どうしても泊まりの準備をする気力が湧かなかった。


ひとりでいれば、おのずと思考が煩くなる。

どんな顔で部署の人達に会えばいいのか。
どんな顔で――難波さんに会えばいいのか。

わからなくて、悩んで、喚いて、ヤケ酒して。しまいには逃げたくなった。今だって、逃げられるものなら逃げたい。


さっきテイクアウトしたアイスコーヒーを喉に流し込む。難波さんの淹れたコーヒーを飲んだせいか、以前程おいしく感じなかったけど、冷たさは気持ちいい。

難波さんへの気持ちも、このコーヒーのように何度ものみこんでしまおうとした。でもそうしようとすればする程、喉に閊えたように苦しくなってくる。


< 181 / 305 >

この作品をシェア

pagetop