「ふ……あっ」


唇から勝手に漏れた声に、自分自身が驚くけれど。もっとあり得ないのはこの状況だった。


目の前にいる……というよりも私を組み敷いているのは、年下の同僚。今まであまり接点がなかったはずの彼は、見たこともない熱情を孕んだ目付きをしていて。私を喰らわんとする獣そのものだった。


なぜ、こんなことになっているんだろう?


28年生きてきて、これまでも、そしてこれからも決して自分に縁がないことだと思っていたのに。


ようやく見慣れてきたマンションの一室で、決して油断していた訳じゃない。けれど、地味で平々以下の女である私には、恋愛なんて一生関係ないと悟っていたのだから。


それなのに……モテるであろう彼が、どうして??


彼は彼女が好きじゃなかったの!?


「意外そうな顔をしてる」


笑ったような、それでいて不穏な顔つきで彼は私の耳元に囁く。


「あいつに素直に渡すと思ったのか?」


不敵に唇を歪ませた彼は、私がどれだけ暴れてもものともしない。細身だけど頑丈で力強い体はやはり男性そのもので。嫌でもその力の差を痛感させられる。


「―――」


何事か囁いた彼は私に顔を近づけて、全てが真っ黒に塗りつぶされていった――。



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