身代わり王子にご用心



「変わりたいと思ったあなたに、一ついいことを教えてあげるわ」


ナイショ、と言うように唇に人差し指を当てた富士美さんは、私にヒソヒソと話してきた。


「あなた自身は花の種だ……って思って」

「花の種……ですか」

「そ。いい? 花の種は蒔いただけで放置してもいつか芽が出るかもしれない。けど、綺麗な花を咲かせるには、細かな世話が必要でしょう。
水をやったり土や栄養に気を付けたり、温度や日光や害虫対策……どれ一つ疎かにしても、立派な花は咲かないわ」


それは確かにそうだと思うから頷くと、でしょう? と富士美さんは話を続ける。


「女性なら誰でも綺麗に咲ける種を持っているの。それを芽吹かせ育てて綺麗な花を咲かせるか、枯らしてしまうかはあなた次第よ。桃花ちゃん。
今、女性として輝いている人は努力して花を咲かせたの。
だから、わたくしはあなたにも綺麗な花を咲かせて欲しいの。今日は全てをわたくしに任せてちょうだい」


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