身代わり王子にご用心

思わぬ一夜






結局、大谷さんは素直に罪を認めず。警察署に拘留されることになった。


「冷たい態度を取ってごめん。ああでもしないと、ボロが出ちゃいけないから」


桂木さんが謝ってくれたけど、あの場合は仕方ないと思う。葛城家の人間という彼の立場からすれば、確かな証拠もないのに下手に庇いだてすると将来に障るかもしれないんだ。


桂木さんによれば、Uスーパーの本社だけでなく。親会社であるディーユグループの本社でも、盗難があまりにも多いと問題視されていたらしい。


だから、実は従業員に内密で内偵を進めていたんだ……と警察署で明かされた。


「特に水科さんの周辺で問題が発生する頻度が高かったので。こう言っちゃうと悪いのですが、監視目的もあって一緒に暮らすことにしたんです」


それならば納得だわ。縁もゆかりもない私を強引に住まわせた理由が、内偵のためだったなら。


ただ、藤沢さんが私が住むのを提案したのは本当に偶然で。単に私を慕ってくれてたかららしい。それを聞くとこそばゆい気持ちになる。


「未来は本当にあなたを姉のように慕ってくれてますからね。もしもよろしければ、3月末と言わずにずっと一緒に住んでいただければ」

「……それは」

「すぐに結論を出すのは難しいと思いますが、考えておいてください。未来も僕も本心からあなたを歓迎しているんです。 僕には家族がいないので、あなたたちとは本当の家族みたいで……安心して安らげるんです」

< 231 / 390 >

この作品をシェア

pagetop