身代わり王子にご用心
エピローグ~身代わり王子にご用心




バームクーヘンを切ったような形の画像に、はっきりと映る黒い点。それは3つ確認出来て、お医者様は微笑んでこうおっしゃいました。


『おめでとうございます。ご懐妊ですね。現在妊娠7週目となります』





ヴァルヌス王国の首都·カッツエにあるベルンハルト城。ツヴィリング王家の居城であり、現在の国王アッティラ·フォン·ツヴィリング陛下がいらっしゃる。


お城はメインとなる内宮と外宮に分かれていて、内宮には国王陛下や王妃が住まわれる上に宮殿がもうけられ、外宮には王太子と王太子妃が住む形になる。


まだ立太子していないとはいえ、カイはヴァルヌス唯一の直系の王子で王位継承権第一位を持つ。年明けにも勅命で王太子の地位を賜るらしい……けど。


カイは既に外宮の主として内外に認められていて、事実上の王太子とみなされてる。その彼が結婚するならば、せめて血筋正しいお嬢様……となるのだろうけど。


「まだ正式な婚約もしてなかったのに……」


ソファに座った私は、思わずため息が出る。


それもそうですって。


今、私はこれでもかと厚着をさせられている上に、体に負担がないように、とクッションに埋もれてます。おまけに周りをぐるぐると回る足音がうるさいです。


「桃花、気分は良くなったか? ブランジュの砂糖菓子とマカロンを取り寄せた。それとも果物を食べるか? つわりには酸っぱいものがいいと聞いたから、日本のミカンを取り寄せたぞ」


テーブルの上に山のように置かれても、そんなに食べられませんってば。

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