昼下がりのオフィス。

気だるい空気、他に誰もいない会議室。

「そろそろ俺の限界なんだが、いつOKしてもらえるのかな?」

口元には微笑みをたたえ、丁寧な口調ですが、人を壁に押しつけて動けないようにしている所は乱暴そのものです。

あれ以来お誘いは山ほどくるけど、やんわり全部断っている私。

贅沢者と言われそうですが。

だって自信ないんだもん!

この顔も、身体も、惣谷康介に釣り合わない!

それで業を煮やした惣谷康介にこの有り様です。

「ま、まだ早いと思うんです・・・」

とりあえず言い逃れてみよう。

「俺からすれば遅すぎるくらいなんだが?」

どうなんでしょう?

他にサンプルを持ち合わせていない私には判断がつきません。

「こういうことはそんなにもすぐ必要なことなんでしょうか?」

とりあえず率直に聞いてみよう。

「必要だ」

惣谷康介は私を壁に押し付けたまま首筋にキスをした。

アプローチを間違えたようです!隊長!先遣隊がやられました!エマージェンシー、エマージェンシー!

な、何か他にこの場を逃れる術は・・・。

などと考える暇もなく惣谷康介の唇は私を優しくついばんでいく。

優しく、軽く、首筋から耳朶へ。

「ん・・・」

感じやすい部分に触れられ、ゾクリと背中に震えが走り、思わず声がもれる。

「いい声だ」

惣谷康介は片手を離すと、片手で器用に私のブラウスのボタンを一つ外した。

「な、何を・・・」

抗議する間もなく、そこに惣谷康介の唇が落ちてきた。

「やっ・・・」

さらに舌で舐められ、強く吸われる。

「はぅ・・・い、痛・・・」

と、そこを見るとなんとキスマークが!

「今度の土曜、うんと言ってくれなければこれを見える所につけてやる」

「ええええええ!?だ、駄目だめ、絶対ダメ!」

「じゃあ『うん』って言え」

「それもやだあああ」

「じゃあ・・・」

惣谷康介の唇が再び首筋に戻る。

「いやああああ、わ、分かりました!」

首筋に残り1ミリの距離で惣谷康介の動きが止まる。

「了解だ」

惣谷康介は手を離し、一歩下がる。その顔は獲物を仕留めた意地の悪い猫だ。

この、鬼、悪魔!

「なんだよ、俺とヤるのはそんなに嫌か?」

私はぶんぶんと首を横に振った。

「違う・・・。そんなんじゃないです」

「じゃあなんだよ」

「・・・自信が・・・」

私は白状することにした。

「なんだ?」

「私は、惣谷さんに、相応しくないんじゃないかって・・・」

私は消え入りそうな声でようやく言った。

「俺に相応しい女ってどんなだよ」

「もっと美人で、頭が良くて、スタイルが良くて・・・」

私はまくしたてた。

「お前は美人だ」

惣谷康介は私の顔を両手で優しく包むと、私の目を見つめて言った。

私はぱちくりと目をしばたたかせた。

美人?私が!?

「でも・・・!」

「俺の言うことが信じられないか?ん?」

「そういうことじゃ・・・」

「誰がなんと言おうと、お前は美人だ」

「私が・・・美人・・・?」

美人・・・私が美人・・・、惣谷康介が私を美人だと思ってくれてる?

「それから?」

「あ、頭が良くて・・・」

「俺が頭いいんだから、俺に相応しい女っていうんなら頭良くなくていいんだよ。次」

「す、スタイルが・・・」

「お前のどこが悪いんだ?細くて華奢で守ってやりたくなる。俺は細い方が好きなんだよ。次は?」

「・・・」

私はあっさりと三大悩みを打ち砕かれて言うべき言葉を見つけられなかった。

「ちなみに、お前のそのくっそトロいところも愚図々々した性格も好きだからな」

「はうえっ!?」

「んなに驚くなよ。キビキビした自信家の女なんかもう懲りてるんだよ」

むっ。それは聞き捨てならない。

「やっぱり、そういう女の人のほうが・・・」

「待てよ。何でそうなるんだ。まさかお前が嫉妬か?」

「わ、悪い!?」

「いや、似合わないと思ってな。だがなかなか小気味いいな」

惣谷康介は意地悪そうに笑う。

「ど、土曜日・・・」

「うん?」

「土曜日までには私が思う惣谷さんに相応しい女になってみせます。惣谷さんがよくても、私は納得できないから」

「ほう。それは楽しみだな」

私はスッと惣谷康介から身体を離すとドアへ向かった。

いつもの、トロトロ愚図々々した自分は嫌い。

もっさりとした外見も。

変わりたいの。惣谷康介に相応しいように。

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地味OL  オフィスラブ  イケメン  俺様  無愛想 

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