「大丈夫か!?何があった!?」

デスクへ戻ると惣谷康介が真っ青な顔で出迎えた。

「大丈夫です。さ、仕事、仕事」

惣谷康介は呆気に取られた様子。

「分かった。昼休みに会って話そう」



昼休み。

「専務をやり込めてきた!?」

こんなびっくり顔の惣谷康介に会えるなんて私は果報者です。

「だって他に男なんていくらでもいるだろうって言われて頭にきて・・・」

「で、本当に大丈夫なのか?怒らせたのか?」

「うーん、怒ってはいたけど最後は黙っちゃたし。まぁ、最悪辞めちゃってもいいしね」

「お前は・・・」

「それに、あの親子本当に一方的なんだもん。惣谷さんのこと何も考えてない。だから義理立てする必要ない、媚びることもない。あんな親子に好きにさせることない。惣谷さんは幸せにならなくちゃ。惣谷さんの幸せは私が守るわ」

惣谷康介はあんぐりと口を開けると、やがて大声で笑い出した。

「く・・・、くく、ははは!やっぱりお前面白い!」

私は首を傾げた。

何がそんなに面白いんでしょう?

「俺、お前に会えて本当によかった」

笑いを収めると、惣谷康介は私を優しく抱きしめて言った。

「俺、本当に前はリョウコと結婚するつもりでいた」

「ええ!?」

「お前に会う前の話だ。それが自分にとっても会社にとってもリョウコにとってもいいことだと思ってた」

「うん・・・」

「リョウコのことは好きだと思ってた。あの外見だろ?男なら、誰でもやられるさ。でもお前が現れた。お前は俺のこと思っててくれただろう?」

「う、うん」

「リョウコにはそういう所、本当になくて。でも俺男だし、そういう所も目をつぶっていくものだと思ってた。窮屈でたまらなかったけど、人生はそういうものだって思っていたし。でもお前は違ったんだ。その、愛とか幸せとか、初めて分かった気がしたんだ」

「うん・・・」

「最初は本当、気にもしなかったけど、いつも一生懸命で、犬みたいに後ついてくるのが可愛くなって」

い、犬ですか・・・。

「いつの間にか気になる存在になってた。それで、円堂がお前に目をつけた時、とられてたまるか!って思ったんだ」

「へぇ」

「不思議だよな。いつの間にか俺の女のように思ってたんだ。それなのにお前は他に好きな男がいるなんて聞かされてて」

「あはは」

「俺にとっては笑い事じゃなかったよ。それであの時は俺らしくもなく焦って・・・」

「うん」

「俺、お前を俺のマンションに連れ帰っただろ」

「う、うん・・・」

「俺、女を自分の部屋に入れたこと初めてだったんだよ。今までは自分のテリトリー侵されたくなくて。でもお前にはいてほしかった。こんなこと思ったのは初めてだった。実際部屋に運んでみたらあんまりしっくりなじんでこのまま置いておきたいと思ったよ。そしたら不思議なんだよな、いろんな情景が頭をよぎるんだ」

「どんな?」

「いろいろ・・・、お前と暮らして生きていく光景が。馬鹿みたいに幸せそうなんだよな。リョウコの時はこんなこと思いもしなかった。結婚があまりに漠然としすぎてて、何の感慨もなかったのに」

惣谷康介は私の髪をなで、こめかみにキスをする。

「でもお前は違った。お前と会えて本当に良かった。あのままリョウコと結婚していたら俺の人生どうなっていたか分からない。本当の愛とか、幸せとか知らずに生きて死んでいったかもしれないんだ。本当、感謝してるんだ、言葉では言い尽くせないくらいに」

彼は私の目をひたと見据えた。

「だから、どうか少しでも君から与えられたものを返させてくれ。君の恩に報いたい。そしてあの情景を本物にしたいんだ。どこまでも幸せな夢を」

「惣谷さん・・・」

「お前を他の誰にも渡したくない、離したくない。結婚してくれ今すぐにでも」

「は、はい・・・え、あれ?はい?」

ちょ、ちょっと待って、プレイバック、プレイバック。

「なんだよ」

「い、今の、あの、いわゆる・・・」

「プロポーズだよ、悪かったないつもいきなりで突然で」

顔を見合わせた私達はそのあと涙がでるほど笑いあった。

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地味OL  オフィスラブ  イケメン  俺様  無愛想 

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