やばい。やめてくれ、勘弁して下さい。

どうあがいても、どう頑張っても無理、絶望、望みなし。

恋するだけ無駄、あんな人に手が届くはずはない。

それ以上好きになっちゃいけない。引き返せ、引き返すのよ、凜花。

と、そう思う心とは裏腹に、毎日一緒にいるおかげで恋心は募るばかり。

せめて、席がもう少し遠ければ。なのに何で隣なんでしょう、神様ありがとうばかやろう。

「はぁ」

今日何度目かのため息をついた。

「どうした、調子でも悪いのか?」

「いいえ」

そんな様子を見かねて隣の惣谷康介が話しかけてきてくれた。

嘘です、調子は悪いです、なんていうか恋の病です。食欲はないし、ぼーっとするし。あんたのせいだ惣谷康介。

「ダイエットでもしてるのか?」

「ええ、まぁ、そんなところです・・・」

なんとかこの状況に終止符を打たないと、まじでこの身が持たない。ただでさえ痩せっぽちなのに、さらに体重は減ったのだ。

思い切って告白して玉砕しようか・・・。

いや、そんなことしたらきっともう二度と立ち直れない。

それならまだ、夢見ていられる今のほうがいい。

・・・それか、惣谷康介に女でもできればあきらめもつくのよ。

だけどいかにもモテそうなのに、この女を寄せ付けない冷酷オーラの持ち主には彼女がいない。分かる気はする。

じゃあ、逆だ。

「私に、彼氏が・・・いれば・・・」

「何だ、お前男いるのか」

「はっ!?」

えっ、ぼーっとしすぎて声に出しちゃってたの!?

強い視線を感じてふと横を向くと、そこには何故か不機嫌な顔の惣谷康介。

目が合うとぷいとそっぽを向かれた。

え、私何か彼の機嫌損ねるようなこと言った?え?男いたらダメなんですか?

なら、ちゃんと否定しとかなきゃ。男がいないのは事実。好かれるのはあきらめられても、嫌われるのはイヤ。

「あ、あ、あの、私男なんていませんよ。い、今のはちょっと考え事してて、彼氏がいればいいなーって、あはは」

「あ、そう」

惣谷康介は興味はない、という顔をしながらも、不機嫌さは抜けていったので私はほっとした。

「え、何々?上原ちゃん彼氏欲しいの?じゃあ、おじさん立候補しちゃおうかなー」

と、通りすがりの営業部の円堂さんが話に混ざってきた。35歳で婚活真っ最中。ただしモテないから結婚できないのではなく、その逆、モテすぎて一人に決められないらしい。

さもあらん、いかにも遊び人風な甘い容貌に深く心をくすぐる低い声。がっしりした肩幅にしっかりした体躯は頼りがいのあるタフガイだ。

女好きは社内でも広まっており、その手の話のネタの尽きない人である。

「え?いやー、それは・・・あはは」

私は笑ってごまかそうとしたが、

「そういえば最近ちょっと痩せてキレイになったよねー。お、これはひょっとして掘り出し物かな?そうだ、今度飲みに行こうよ、いい店知ってるよー」

円堂さんの笑顔には下卑た何かが混ざっていた。

私はこの時「下心」というものをはっきりと見た。

「あ、あの・・・」

「あ、明日どうかな?仕事終わったら行こうよ、ね?」

「え、あ、明日?え、えーっと、えーっと・・・」

ど、どうしよう、困った・・・用事なんてないし・・・。

こ、このままじゃ「その手の話のネタ」の一つにされてしまう・・・!!

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地味OL  オフィスラブ  イケメン  俺様  無愛想 

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