反比例の法則
プロローグ



「ホント、ごめんね?」

「うん、気にしなくていいから」

「今度、絶対ランチ奢るから!ねっ?!」

「フフッ、期待しないで待ってるよ」

「ホントだってばッ!!」

「あぁ、はいはい。ほら、チーフがお待ちかねよ?」

「ん~、本当に百合、ごめんねぇ」



申し訳なさそうに両手を合わせながらもエントランスで待っている男性のもとへと、満面の笑みで向かう親友の巴香(ともか)。

同じ職場で『独身』を貫いて来た同期の親友。

けれどそれも、残された時間は僅かかもしれない。


半年前から隣りの部署のチーフと付き合い始め、年齢が年齢なだけに、『結婚』は秒読みともっぱら噂が。



短大を卒業して就職したこの会社で、10年目を迎えた私。

新卒で入社した後輩達が次々と寿退社して行くのをずっと見届け、結婚式のご祝儀はこの10年で総額100万円を軽く超えた。


現在恋人は勿論の事、好きな人さえいない私にとって、下ろす事の出来ないご祝儀貯金は、残念な事に今後も続くのは必至。


いつになったら………。



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