愛してもいいですか



「そうしてると本当、女社長って感じですね。ドレス、似合ってます」

「そ、そうですか?ありがとうございます」

「そんなにいい格好してるのにお互い仕事なんて嫌になっちゃいますね」

「ふふ、本当です」



『仕事』、彼のその一言に一気に現実に戻らされる。



そう、仕事。このパーティも、私も、日向も。ただの仕事。それだけの、特別な意味などないことを、思い出させる。

……仕事、だもんね。そりゃあ日向だって、自分の会社の社長に変な格好はされたくない、か。

これも秘書の仕事のうち。



「あ、じゃあ俺そろそろ行かないと。また連絡します」

「えぇ、また」



松嶋さんはそう小さく手を振ると、ホール内へ向かい歩いて行った。その場に一人残された私は、通路の窓に映った自分の姿を見る。

このドレスも、髪型も、さっきの日向の『嬉しい』も、全部彼の仕事のうち。そう、全部。



……分かってた、つもりなんだけどな。

キラキラと眩しいパーティ会場のなか、その事実ひとつだけが虚しく心に突き刺さった。






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