素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜
自ら招いたピンチ
定時に仕事を上がり、ロッカールームで制服から私服に着替え中。


「先輩、わたしの格好、どうですか?」


一緒に上がった後輩が、着替え終わったところで私に話し掛けてきた。あらためて彼女を見れば、ミニスカートから伸びた生脚がピチピチして……って、あれ? スカートじゃないのかな、これ。よく分かんないや。


「え? ん……今日は一段と可愛いんじゃない?」


と言ってほしいのだと思ったから言ってみた。実際のところ、その子が普段はどんな服装かなんて憶えていない。私は自分のもだけど、他人の服装にも全く興味がないから。


「ほんとですか? 良かった……。今日はこれからデートなんですぅ」

「あらま。あなた彼氏なんかいたっけ?」

「えーっ? この間言ったじゃないですかぁ。合コンで知り合った男の子と付き合い始めたって……」

「ああ、そうだったわね。ごめんごめん」


いっけない。この子、確かにそんな話をしてたっけ。“軽いなあ”と私は思ったんだった。


「先輩はまっすぐお帰りなんですか?」

「ん? ううん、ちょっと寄ってくわ」

「へえー、どこにですか? っていうか、お一人で?」


しつこいなあ。もしかしてこの子、私をバカにしようとしてる?

“イケメン係長とデートよ?”って言ってやりたい気持ちもなくはなかったけど、


「一人よ」


と答えると、


「そうなんですかぁ」


と、さも気の毒そうに眉を下げた。腹の中じゃ何を考えてるか分かったもんじゃないけども。

ま、そんな事はどうでもいいわ。


「寂しいもんよ……」


と私は言いながら、言葉とは裏腹に頬が緩んでしまった。阿部和馬が驚く顔を想像したからだ。


「今度、合コンにお誘いしますね?」


と言われ、「よろしくね」なんて適当に答えて私は会社を後にした。

どうでもいいけど、彼氏が出来ても合コンするの?
若い子の考えは解らないわ……

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