素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜
素敵な勘違い
曽根崎さんの汗ばんだ手が私のTシャツの中に入り込み、脇腹を這うようにして上へ上がって行った。

それはまるでナメクジが体を這っているかのようなおぞましさで、それを必死に耐えようと思ったその時、ドカドカっと人が走って来る音がした。


「何だ、てめえは!? うわっ」


そんな曽根崎さんの叫び声がし、次にドスッというような音がしたと思ったら、私の上に伸し掛かっていた曽根崎さんの姿が消えた。重みと共に、一瞬で。そう、正しく消えたって感じだった。


そして呆然とする私の目に、次に映ったのは……王子様?


なわけはなく、よく見れば阿部和馬だった。でも、初めは確かに王子様に見えたんだ。優しい王子様と言うよりも、怒った王子様って感じだけども。あの凡庸な顔立ちの阿部和馬が……


私は、無様にめくれ上がったTシャツの裾を引っ張りながら、阿部和馬の顔をじっと見た。

王子様に見えたのはもちろん勘違いだけれども……


どうして今まで気付かなかったんだろう。阿部和馬が、こんなに格好いい男だという事に……

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