Candy House
通帳を見て決まって言うセリフは、
「とっとと働くとこ見つけないとな…」

あたしはそう呟いた後、長いため息をついた。

大学を卒業した後の就職先はまだ決まってない。

「早く出て、就活しよう…」

通帳をダッフルコートのポケットに入れると、缶コーヒーを片手に広場を後にしたのだった。


あたしの人生を一言で言うと、“波瀾万丈”だ。

11歳の時に交通事故で両親を亡くしたその後は、母方の祖母に引き取られた。

祖母の年金とパート代、両親がわずかに残してくれた遺産で高校を進学して卒業。

その後は奨学金で大学に進学した。

心配していた卒論も無事に提出し、楽しい年末を思い描きながら郵便局へバイトに向かっていた時だった。

あたしの携帯電話に祖母が倒れたと言う連絡が、祖母のパート先から入った。
< 2 / 370 >

この作品をシェア

pagetop