【短編】失恋した次の瞬間には壁ドンされてました。
「もう、分かったから」
『明日の放課後、あの学校の片隅。』

送ったあとに、部活かもしれないと思ったが、幸いテスト前であったので二つ返事でOKされた。
それなら、最初のときはどうだったのかと問えば、遅れるのを覚悟していたらしい。
なんという覚悟なのだろうと、笑えばいいのか呆れればいいのか分からず変な顔になった。

この頃にはすでに、1日の10分の1は相原について考えて考えているのだがその自覚は瑞希にはない。


×


次の日の放課後。
最初の出会いから一週間ほど経っている。

彼女の方が先に来て、その場所で待っていた。

「待った?」
「まったく」
「それで、なに?今度は瑞希ちゃんからの告白?」

そうかもしれない、と思った。
告白とは、愛を伝えるものだけではないのだから。

「薫くんは、なんでここまでするの?」
「好きだからだよ。言わせんな、恥ずかしい」

言葉のわりにはまったく恥ずかしさを感じない。

「だとして、私でいいの?」
「なんでいきなりそんな」

怪訝な顔になる相原を他所に、瑞希は独白を始める。

「私ね、泣けなかったんだ。振られたあの日。悲しかったのは確かなんだけど、全然泣けなかったんだ。むしろ、納得したと言うか。すごく冷静で。そんな自分が嫌だった」

だからなんだと言いたげな彼が、すごくおかしかった。
だから続ける。

< 9 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop