psi 力ある者 愛の行方 
戻りたい






  ―――― 戻りたい ――――





家路を辿りながら、気を失っている間の出来事を陸が話してくれた。

帰り際、私の様子が気がかりだった陸は、校門を抜けたところで踵を返した。
もう一度上履きに履き替え、教室へ戻り中を覗くも人の気配がない。
机の上に置かれたままの鞄にまだ校舎内にいるんだ、としばらく教室で私のことを待っていたらしい。
けれど、夕暮れが近づいてきた頃。
戻る気配のいっこうにないのを不審に感じ、教室を出る。

フラフラと校舎内を歩き、屋上へ行く階段を発見した。
今まで一度も踏み入れた事のないそこに興味を惹かれ扉を開けると、そこに私が倒れているのを発見したと言う。

少し離れた場所では、黒谷がわなわなと身体を震わせ怯えたような姿で立ち尽くしていた。
何もしていない、勝手に倒れたんだ。と叫ぶように陸へと言いったらしい。
泉君に近づくからばちが当たったんだ。と吐き捨て不安そうな顔をしていたと。

黒谷が屋上を去ったあと、私の身体を抱え上げ、陸は急いで保健室へと運んでくれた。
そして、目が覚めるまで、ずっと傍にいてくれた。
廊下で蹲った時のように、ずっと着いていてくれた。

黒谷は、目の前で急に倒れた私のことを、どう思っただろう。

ざまあみろと嘲笑っただろうか。
いい気味だと吐き捨てただろうか。

自分の念が私を侵したとはつゆほども思わずに……。

私は、一般人の念を甘く見すぎた。
自業自得ともいえるこの出来事。
だけど、これでひとつの可能性が消えた。

あとは、泉。

けれど、私は泉が力ある者かどうかなど、もうどうでもよくなっていた。

元に戻ろう。
元の自分に。

外では冷静で、冷たく、言葉も少なく。
浅い付き合いの中で生きる自分に。

家の中では、両親も心配するだろうから、陸とも仲良くしていこうと思う。
だけど、外では。
学校では、距離を置こう。

それが一番いい。

私は、この世に一人の力ある者。
他に仲間がいるかどうかなど、もうどうでもいい。
こんなに苦しいのは、もう懲りた。

自分の精神力のなさが、明るみに出た今回の事件。
力を制御できなかった故に招いた事。

もう、こんなことはたくさんだ。

力なんて関係のない、少し前の自分に戻りたい……。



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