psi 力ある者 愛の行方 
異変





  ―――― 異変 ――――





陸との繋がりを持ってから、私の体にまた異変が起きていた。

図書室で陸に抱きしめられた時から、あれほど辛かった頭痛も貧血も、体内に及ぼす苦痛と呼ばれる全てのものが私から離れていた。
他人の意識が流れ込んでくる事もなく。
ちゃんと、自分で力を制御できていた。
陸が傍にいてくれるだけで、私の心は安定していくようだった。

なのに、ここへ来てまた体が、力が、おかしい……。

おかしいといっても、あの時のような苦しみはない。
ただ、力が無限に解放されていくような感覚。
抑えていたものがあふれ出し、器に納まりきれないそれが決壊し一気に流れ出して行くような感覚。

傍に居る相手の感情を吸収するように感じ。
まるで異次元にでも投げ出されたかのように、見知らぬ場所で動けず固まってしまったようになる。

けれど、その感情は以前のように言葉になって流れ込んでは来ない。
色と言うのだろうか。
重黒しい圧迫感のある景色に取り囲まれるような。
その色たちが生地のように巻きつき覆い尽くしていく、そんな感じだ。

暗く色濃い中に押し込められ、密室の中で空気が薄くなってでもいくような息苦しさを伴っていた。

家に居るうちは、いい。
お母さんの感情は、あの通りの性格だからほのぼのとしたものだし。
父さんも、仕事で疲れている時は翳りが強くなるけど、それ以外はほぼ能天気な明るさを持っている。

陸は……。
陸は、何故か感じない。
陸の感情は、不思議と私に流れ込んでは来ない。

どうして……?

疑問は思えど訊ねられるはずもない。


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