psi 力ある者 愛の行方 


「あ、いや。別に謝るほどじゃ」

夕暮れの中、カラスでも鳴きそうな間の抜けた雰囲気が漂ってしまった。
そんな空気を変えるために別の話題をふってみる。

「陸って誕生日いつ?」
「一応……三月二十七日」
「うっそー。私その前日の二十六日だよ。じゃあ、私の方が一日お姉さんだ」

我が物顔でそう言ったら。

「たった一日じゃん」

納得いかないって顔をしている。

結構、負けず嫌い?

少しずつ感じる親しみに、自然と表情が緩んでいった。

陸は、下着が納まるダンボールを自分の方へ引き寄せ、私の傍から離す。
その後、別のダンボールからまた荷物を取り出し、手際よく片付けていった。

陸の手によって、奇麗に収められていくその物たちには几帳面さが伺えた。
それにしても――――

「……学校って同じところ?」
「うん。一応月曜からそっち。制服もできてるし」
「そっか。同じ学校かぁ……」

家にいる私と、学校での私。
かなりのギャップがあるから、驚くかな……?

学校にいる時は、さっきみたいに自分の感情をストレートに表情に出したりなんて絶対にしないし。
いつだって冷静に、レンズの奥から一歩引いたようにして物事を見たりしている。

少し前、泉には感情的な姿見せちゃったけどね……。

家と学校での違いに、いろいろといわれたら困るな。
マッ○で泉に怒った事や、路上での告白を思い出して、つい浮かない顔になってしまった。

「同じ学校だと何か問題でもあるの?」

私の顔色を見て、陸が不思議そうに訊いてくる。

「あ……ううん」

私は、首を振り片付けの続きをする。

今は、月曜の事を考えるのはよそう。
なるようにしかならないだろうから……。



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