psi 力ある者 愛の行方 


この前一度力を使ってからというもの、少し気が緩みすぎている。
こんなに簡単に力を解放していたら、精神が持たない。
ちゃんと心を冷静に保たなきゃ。

そうやって、自分を戒めた後でまたハッとする。

ちょっと待って。
何で私が動揺しなきゃいけないの?
何でこの場を取り繕うとしてるの?

泉の気持ちはよく解ったけど、私たち付き合ってるわけじゃないじゃない。
だったら、そんな風に責めらたり、睨まれる筋合いなんてないよね?

無理やり浮かべた笑顔をスッと引っ込め、私は開き直った。

「泉に責められる理由はない」

いつもの調子を取り戻し、冷めた視線で言い返す。
すると、今度は逆に泉のほうがグッと言葉を詰まらせた。
そこへ追い討ちを掛けるように一言告げる。

「どいて」

席を譲るよう吐く台詞に、不服ながらも泉が立ち上がる。

やっと自分の席に着き、鞄の中から授業道具を出していると、泉はまだそこに立ったまま私のことをじっと見ていた。

「なに?」

壁一枚隔てるように、眼鏡越しで見やる。
すると、ぎゅっと両脇で拳を握りしめる泉。

「俺、負けないからなっ」

ひとこと吐き捨て教室を出て行った。

……負けないって……。
陸の事、彼氏とでも勘違いしてる?

明らかに焼きもちを妬いた言葉に、思わず笑いが込み上げてきた。

泉君。
陸は、姉弟ですから。

周りに気付かれないよう、私は必死に笑いを噛み殺した。


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