psi 力ある者 愛の行方 
もうひとつの痣




  ―――― もうひとつの痣 ――――





放課後。
やっと一日が終わったとでも言うように、陸が急いで帰りの準備をしている。

「未知、帰ろ。玄関で待ってるから」
「あ、うん」

一緒に帰る約束をしたわけじゃないけれど、朝一緒に登校した延長上のように、当たり前に言って教室を出て行った。
同じ家に帰るのだから、なんら不自然なことではないけれど、一人じゃないって、なんだか嬉しいものかもしれない。

陸を待たせないように、私も急いで帰り支度をして席を立つ。
教室のドア付近からは、黒谷が陸へと熱い眼差しを送っているのが見えた。

黒谷さん。
あなたが好きなのは、泉じゃなかったっけ?
誰でもいいわけ?

私に対しては、色々言ってくるのに自分のことは棚上げにしている彼女を一瞥する。

陸の姿が見えなくなると、黒谷は思い出したように友達へと自慢話をし始めた。
どうやら、以前から親におねだりしていた腕時計を買ってもらったらしい。
左手首にはまる新品の時計を仲間に見せ、得意げに笑っている。
その後、はずして見せてとでも言われたのだろう。
左手首から新品の腕時計をはずし、手渡して見せている。

私は机の間を縫うようにしてすり抜け、黒谷たちが居る戸口の傍へ向かった。
近くまで行ったところで、いつもの挨拶をする。

「黒谷さん。バイバイ」

澄ました顔で言うと、ふんっ。と鼻息で返された。
その態度に首をすくめ、視線を何気なく黒谷の左手首へとやった。


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