私に意味を。
あのね。
『皆さん。明後日までに、自分の名前の意味について、お父さんやお母さんに聞いてみてきてくださいね?』

私が小学5年生の春。

担任の先生に言われた言葉。

当時の私は、すごく興味があった。

自分の、鮎川夕日《アユカワユウヒ》と言う名前に、どんな意味が込められているのかが。

だからその日の帰り道は、そのことだけを考えて家に帰った。

そしてすぐに。

『お母さん!私の名前の意味って何?!』

と、訪ねた。

これが、私の中の歯車が、狂うきっかけとなった。

お母さんは、少し困ったように苦笑いをしていた。

私は、名前の意味、忘れちゃったのかな?などと考えていた。

本当、愚かだった。

『夕日、こっちおいで。』

そう言って歩き出したお母さんの後ろをついて行くと、“朝日ちゃん”の仏壇の前でお母さんは止まった。

鮎川朝日《アユカワアサヒ》ちゃん。

私の、双子のお姉ちゃん。

仏壇に飾られている写真は、さすが双子と言っていいほどに私にそっくりだ。

真っ黒な髪を腰まで伸ばしていて、目はパッチり。

笑っているその少女は、私の幼い写真と疑うほどに似ている。

でも、今はもういない。

死んでしまったらしい。

私たちが5歳の頃に公園で遊んでいたら、朝日ちゃんが道路に飛び出してしまい、私も後を追いかけて、二人とも車にはねられてしまったらしい。

その時、お母さんとお父さんは遠くのベンチに座っていたけど、私は白いワンピース、朝日ちゃんは黒いワンピースがお気に入りで、その日も着ていたから、どちらが道路に飛び出してしまったのかが分かったらしい。

朝日ちゃんは即死で、私は5歳より前の、事故の日より前の記憶がないのだ。

だから私は、朝日ちゃんを全く覚えていない。
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