■俺は彼女を愛しているらしい

「うーん。」

ほぼ指定席になりつつあるCAD端末の前で俺は唸った。

この設計が上手くいかない。

画面に表示されているのは俺が任されている部位の3D画像、マウスをぐるぐる動かしながら画面の中身を回転させて状態を確認する。

そしてまた唸るのだ。

「うーん。」

角度を変えて見ても分からない。

最初は酔いそうになっていた3D画面も1ヶ月も経たない内にすっかり慣れて、今ではどれだけ回転させても酔うどころか天地や方向さえも判断が付くくらいになっている。

最近の設計は製図版を使わない。そんなことは分かっていたけど、こうCADばっかり触っているだけじゃ何だか誰が設計してるのか分からないなと思う時もあるのだ。

設計してんのって俺?それともCAD?

製図台で定規引いてる時代の方が格好良かったんじゃないかなんて現実逃避したくなるほど今の俺は悩んでいる。

「うーん。」

この設計が上手くいかない。

大きい車のほんの一部分の設計、何も知らない人からすればそんなところ適当でいいんじゃないかと言われそうだがそうもいかないのさ。あれでなかなか精密な設計の車両は日本人らしい安全性で雁字搦めだ。

「うーん…。」

「煩い。いいから早く相談しろ。」

何度目かの俺の無意識唸りを遮ってきたのは横に座る先輩設計士の石川さん。端末に向いたままだが話を聞く態勢なら取れると教えてくれているらしい。

優しいな、ここは素直に甘えておこう。

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オフィスラブ  年下  鈍感  腹黒  セクハラ  男目線  花火織 

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