私は彼に愛されているらしい
■決戦の金曜日

振り回される



「金曜日、空けといて下さい。」


そう言われて別れた水曜日。

夢じゃないか、妄想じゃないか、何かの間違いじゃないのか、色んな可能性を引っ張り出してなんとか事実ではないように持っていこうとしていたけど。駄目だった。

よくよく考えたら私は竹内くんの連絡先を知らない。

社内メールと内線くらい?

席は隣の島だから近いけど、普段から何の用事も無しに会話するほどの仲ではないから物理的な距離が近いだけだ。

精神的な距離は多分、そんなに近くはない。

でも。

「竹内ー!」

「はい!」

チーフが電話を振り回しながら竹内くんの名前を呼ぶ。それだけで自分宛の電話が来たのだと察知した竹内くんは元気な返事をして自席に戻っていった。

竹内くんは体育会系だな。

返事の仕方や上の人への態度でそれは見て取れる、きっと上下関係が厳しい場所にいて年上に対する姿勢を鍛えられたのだろう。根性もありそうだし。

よくよく見れば適度な筋肉が付いていそうでスタイルもいい、背も高いし清潔感もある。

私はCAD端末に座りながらもここぞとばかりに竹内くんを観察していた。ただ眺めているだけでも私の中の竹内データが増えていく。

うん、今までこうやって見たことはなかったけど別に気になるところなんてない。むしろ好印象だと思う。

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