私は彼に愛されているらしい
愛されて
予定時間よりも少し早めに勤怠を付けて私はロビーで竹内くんを待っていた。

何でこんなことになっているのだろう。

当然のことながら現状に疑問符が並んでくる。

竹内アカツキくんは後輩だ。
同じ部署で、隣のグループ。
島が近いしよく顔を合わせることからある程度の会話はしたことがある。
彼と同じグループの後輩女子社員がイケメンだと盛り上がっていた時期もあった。
上司受けも良く、仕事も出来ない方ではない。

ここまで来たところで私の持っている竹内データは終わってしまった。

何だ、これ以上の情報はないぞ。

そして何より口が悪くて意地も悪い印象なんて無かったし、そんな話聞いたことも無い。

明らかな上から目線で馬鹿にされ、挙句弱みまで握られたような形になっている。

「…何かおかしくないか?」

ふと我に返って首を傾げてみた。

何でこんなことになっているのだろう。

「早いですね、清水さん。お待たせしました。」

そう言われて顔を上げると、そこには待ち人である竹内アカツキの姿があった。

思わず顔をしかめてガン見をしてしまう。

「行きましょうか、お薦めの店があるんです。」

いかにも爽やかなその様子に合点がいった。外面だ、外面がいいタヌキだったんだコイツは。

「二面性~っ!」

悔しくて唸るような声で睨みも付け足した。しかし彼は爽やかに無視をして前を歩いていく、心なしか口の端で笑われているような気がして腹が立った。

構内を出て歩いていく彼をひたすらに追っていく。

「あんた車だろ?ナビするから乗っけてってくんない?」

「どうぞご勝手に!」

もう半分以上はやけくそだった。人の目が少なくなった途端に地か何か知らないが爽やかとはかけ離れた態度を出してくる竹内くんに腹が立つ。

< 4 / 138 >

この作品をシェア

pagetop