私は彼に愛されているらしい
え?嘘でしょ、外に出たってことはまさか!

「まさかもうお会計…?」

「当たり前でしょう。」

「ほ、本当!?」

いつの間に…そうだ、私が化粧室に行っている間に済ませたんだ!なんてことなの!

「今日は私がご馳走する筈だったのに!」

「そんなこと言いましたっけ?」

「言ったよ!だから今日の約束だったんじゃないの!?」

焦った私は声が大きくなってしまったようで、口元に人差し指を当てた竹内くんの顔を見て初めてそれに気付かされた。恥ずかしい。

そう思ったと同時に気が付いた。店内でのやりとりが頭に浮かんで視線が揺らぐ。

まさか、さっきの化粧室だって竹内くんが誘導したんじゃ…?

「あの時わざと…?」

呟いた声に意味ありげに竹内くんの口角が上がって見えた。やっぱりわざとだ、私に席を外させるためにわざと化粧室に行かせたんだ!

「話が違う!」

繋がれた手を自分の方に引っ張って竹内くんの足を止める。さすがに驚いたようで竹内くんは目を丸くさせて振り向いた。

「おかしいと思ったのよ!私の方のメニュー表には料金が載っていないし、何の相談も無しにお店を決めたのだって!一体どういうつもりなの!?」

「どういうつもりって…分からないんですか?」

「分からないから聞いてるの。」

「…呆れた。本当…あんたいくつだよ。」

また言われた!呪いの様なその言葉はやっぱりあの時のことを思い出させるだけあって竹内くんは不機嫌だ。

細めた目が怖い。

また何か言われる、そう思って近付いてくる竹内くんを警戒し私は身構えた。上の方から凄まれるのって結構怖いってこと知らないのか!

「デートですよ。俺は清水さんをデートに誘ったんです。」

「は…。」

開いた口が塞がらない、まさにその状態にある私は言葉にも詰まってただただ竹内くんを見ていた。

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