初恋はカフェ・ラテ色
あまりにも忙しいときは私も手伝うことがあるけれど、かえって洋輔さんに気を使わせてしまうから余程のことがない限り遠慮している。

本当は洋輔さんのためならなんでもしたいのだけど。

やっぱり私ってストーカー体質なのかも……。

「大丈夫よ。オーナーが話せないって程じゃないから」

レジからちらりとカウンターの中を見ると洋輔さんは背を向けてコーヒーマシンに向かっていた。

カウンター席は空いており、ちょうど洋輔さんが立つ位置のスツールに近づき腰掛ける。

小顔に広い肩。後姿も完璧。

プシューッとエスプレッソマシーンが音をたてている。

カップにエスプレッソを注いだ洋輔さんが振り返る。それから私がいるのがわかっていたかのようににっこり微笑み「いらっしゃい」と言った。

「心春、何にする?」

待機していたスタッフにエスプレッソとカフェオレを渡すと、涼しげな目で私を見た。

いつもそうだけど、目と目が合うだけで胸がドキドキしてくる。

それにこの艶のある声。

高すぎず低すぎず……心地よく聞きやすい声はどこか色気を含んでいるように聞こえてしまう。

このドキドキは洋輔さんといる時に限って慢性化する。

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