初恋はカフェ・ラテ色
 私の唇がきれいになったところで、洋輔さんの手が離れる。

「幼稚園の夏祭りか。楽しそうだね」
「私も初めてだから今から楽しみなの」

洋輔さんと夏祭りに行ったことがない。お店は21時までだし、夏の夜は涼を求めて集客率がいい。

週末に行われる地域の夏祭りがカフェの定休日に開催されるしか、洋輔さんと夏祭りに出かけられないのだ。そんな確率は0%に等しい。

洋輔さんは浴衣姿も似合うだろうな……ふたりで浴衣デートしたいな……。

「楽しそうだね」
「うん。それはもう浴衣が良く似合って――あっ!」

幼稚園の夏祭りのことじゃなくて、浴衣デートを妄想していたから顔が緩んでいたみたいだ。そんな私を見て洋輔さんはクスッと笑う。

「幼稚園の夏祭りは浴衣なの?」
「えっ? それはまだ聞いてないけど……」
「心春の浴衣姿、良く似合うだろうな。今まで一度も着て見せてくれなかったね?」

今日は洋輔さん、どうしたの? そんなこと一度も言ってくれたことがなかったのに。

戸惑ってると、さらに笑みを深めて見つめられる。

「成人式の振り袖姿もきれいだったな」

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