愛しい君~イジワル御曹司は派遣秘書を貪りたい~
16、捕らわれたのはどっち?
 私が19の時、誉が家に来た。

 兄への報告の為だ。

「アメリカに留学する」という言葉が誉の口から出た時、正直言って目の前が真っ暗になるくらいショックだった。 

「俺がいなくなって寂しいか?」 

 いつもと同じようにからかい半分で誉は聞いてきた。

「俺様なあんたがいなくなって清々するわ!」 

 寂しいなんて絶対に言ってやんない。

「本当、素直じゃないな」

 誉は苦笑する。

「何を根拠にそんな事言うのよ。私はいつでも素直です」 

「ふーん、俺がいなくても泣くなよ。お前泣き虫だからな」

 誉はフッと微笑すると、突然私の左手をつかんで薬指に口づけた。

「ち・・ちょっと、何すんのよ!」

 誉の恥ずかしすぎる行動に思わず赤面する。
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